自分が書いた詩を初めて公開した時、勇気が必要だったことを今でも覚えている。自分の無力さを公に晒すようなものだからだ。だが、詩を書きたいと思う以上は、自分の力を自分に知らしめておく必要があった。「お前の力は、こんなもんだ」と。僕が求めるレベルより遥かに下を彷徨う作品たちは、今でも僕に無力さを痛感させている。

 時に「隣の芝は青い」という言葉がある。NHKで「詩のボクシング」を見た時、無力さは抑えきれないほどに膨張してしまった。世の中では、こういった状況を自信喪失というのかもしれないが、幸いにも夢という病気にかかっている僕は「いつかオレが超える」と無責任に言ってのけることができてしまうのだった。

 無力さを知り、それでもまだ何かをこだわり、追い続ける。それが正面を向くということだと、僕は信じる。嫌なものを避けるように目をそらしていては、勝負はできない。前を見て進むのは当たり前。問題は正面かどうかだ。

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 JR新大久保駅の改札を出て左に進み、最初の曲がり角を左折して真っ直ぐ進む。左手に見えた「Club Voice」という地下室では、新春早々に未熟なロックバンドが集まり、音を奏でていた。 〜オレはロックバンドの馴れ合いを観に行くのでなく、未熟な音の向こう側を探りに行くのだ。オレはロックなフリをしに行くのでなく、ロックなフリをしたがる自分を殴りに行くのだ。オレは音の力に頼る音楽を聴きに行くのでなく、言葉の力に頼り過ぎる空虚な自分を知りに行くのだ〜 刺激を求めて、暗闇からステージの上に目をやる。「Quesera Spunky Roars」というバンドの出番が訪れた。何をすればいいのか分からず、ない楽器を弾く素振りを見せる手。どこへ行けばいいのか分からず妙な動きをする足。以前に「ELEGANT CHAOS」というバンドを紹介した際はベース弾きだった男が、スタンドマイクの前で生き生きとしていた。

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 目で見ず、声で見られるか。目で見ず、言葉で見られるか。僕は正面に立つフジイの正面で、デカイ音を聴いていた。どこの世界で何が起きても、僕は自分の次の世界へ。今日も明日も正面突破あるのみだ。

<おまけ:歌詞>
音を立てながら崩れてく 夜空を食べ尽くした欲望
踊り狂う花に魅せられて 一瞬のまばたき
飛び去る Goldie’s Bird

捨て身の虚勢で貫いてく
僕等にしか見えないこの世界
掻きむしる様に掻き鳴らしてる
僕等にしか見えないこの世界

(Goldie’s Bird/Quesera Spunky Roars)

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