競走馬のクローンが誕生【4月15日(金)】
2005年4月15日 モノ作りが好きなのは結構な話だが、馬まで作るのか。共同通信が報じるところによれば、イタリアの研究所が、耐久レースを優勝した馬の遺伝子をコピーしたクローン馬の生産に成功したらしい。競馬は“ブラッド・スポーツ”と呼ばれるように、配合によって馬の能力が大きく左右される。そのため、生産は育成よりも大事とさえ言われるほど重要だ。競馬好きな僕は思う。名馬のクローン生産は、夢があるようで夢のない話だ、と。
話を競馬に限る。クローン馬の生産で夢が膨らむのは、こんな場合だろう。1996年、前年の英国ダービーを含め4戦4勝(英ダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、凱旋門賞を勝利)の成績で引退した“世紀の名馬”ラムタラが日本に輸入された。購買価格は、なんと約33億である。しかし、実はその後、もっと大きな額の話が生まれようとしていた。当時、最高生涯獲得賞金を塗り替えたシガーという米国産馬を日本の企業が購入しようとしたのだ。結局、商談は成立しなかったようなのだが、その後に事件が起きた。なんと、シガーは先天的精虫不足で受精能力がなかった。世界中の不妊治療専門の獣医が呼び集められたが治療は実ることなく、種牡馬にはなれなかったのだ。例えばこんな時「シガーの遺伝子を後世に残せたら……」という発想には夢があるではないか。
しかし、一方で僕は「無事是名馬」の考え方を重んじる。簡単に言ってしまえば、生きていてナンボ、動くことができてナンボ、結果を出せてナンボということだ。結果的にシガーは種牡馬になり得なかった。だったら、それまでという話なのだ。日本でも有り余る才能を持ちながら後世に遺伝子を残すことなく消えていった名馬がいる。例えばサイレンススズカ。日本で初めて世界最高峰のレース凱旋門賞(仏GI)で2着に健闘したエルコンドルパサーを子ども扱いした“神速の名馬”である。競馬は普通「逃げる」か「追う」か、どちらかのパターンで勝利を目指すのだが、サイレンススズカの才能は、武豊が「逃げて追える馬」と絶賛したほどだった。しかし、この名馬は府中のターフで命を絶った。競争中に故障を発生。予後不良と診断されて安楽死処分となったのだ。この場合でも「サイレンススズカの遺伝子を後世に残せたら……」と、確かに一瞬は思う。しかし、短い生涯の中で強烈な光を放ったものを記憶から現実へと引っ張り出すことを拒みたい。あの馬は、あの馬でしか存在し得ないインパクトがあった。クローンが遺伝子を伝えたとしても、そのクローンは w)?ヤサイレンススズカ」ではないとしか思えない。
そう考えると、シガーにしてもシガーを見てきた人にとっては同じ思いを持つものかもしれない。クローン生産の技術は素晴らしいかもしれない。それでも、安易な夢で熱いドラマを壊さないでほしいと強く願う。
<おまけ:そうは言いながら……>
競馬ファンでなくとも聞いたことがあるかもしれない、有名なゲームがある。『ダービースタリオン』。仮想の世界で配合や調教を行うものなのだが、僕はここでサイレンススズカと同じ配合の馬を生み出し、種牡馬にし、現実で見られなかった夢の続きを見ようとしていたりする。
話を競馬に限る。クローン馬の生産で夢が膨らむのは、こんな場合だろう。1996年、前年の英国ダービーを含め4戦4勝(英ダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、凱旋門賞を勝利)の成績で引退した“世紀の名馬”ラムタラが日本に輸入された。購買価格は、なんと約33億である。しかし、実はその後、もっと大きな額の話が生まれようとしていた。当時、最高生涯獲得賞金を塗り替えたシガーという米国産馬を日本の企業が購入しようとしたのだ。結局、商談は成立しなかったようなのだが、その後に事件が起きた。なんと、シガーは先天的精虫不足で受精能力がなかった。世界中の不妊治療専門の獣医が呼び集められたが治療は実ることなく、種牡馬にはなれなかったのだ。例えばこんな時「シガーの遺伝子を後世に残せたら……」という発想には夢があるではないか。
しかし、一方で僕は「無事是名馬」の考え方を重んじる。簡単に言ってしまえば、生きていてナンボ、動くことができてナンボ、結果を出せてナンボということだ。結果的にシガーは種牡馬になり得なかった。だったら、それまでという話なのだ。日本でも有り余る才能を持ちながら後世に遺伝子を残すことなく消えていった名馬がいる。例えばサイレンススズカ。日本で初めて世界最高峰のレース凱旋門賞(仏GI)で2着に健闘したエルコンドルパサーを子ども扱いした“神速の名馬”である。競馬は普通「逃げる」か「追う」か、どちらかのパターンで勝利を目指すのだが、サイレンススズカの才能は、武豊が「逃げて追える馬」と絶賛したほどだった。しかし、この名馬は府中のターフで命を絶った。競争中に故障を発生。予後不良と診断されて安楽死処分となったのだ。この場合でも「サイレンススズカの遺伝子を後世に残せたら……」と、確かに一瞬は思う。しかし、短い生涯の中で強烈な光を放ったものを記憶から現実へと引っ張り出すことを拒みたい。あの馬は、あの馬でしか存在し得ないインパクトがあった。クローンが遺伝子を伝えたとしても、そのクローンは w)?ヤサイレンススズカ」ではないとしか思えない。
そう考えると、シガーにしてもシガーを見てきた人にとっては同じ思いを持つものかもしれない。クローン生産の技術は素晴らしいかもしれない。それでも、安易な夢で熱いドラマを壊さないでほしいと強く願う。
<おまけ:そうは言いながら……>
競馬ファンでなくとも聞いたことがあるかもしれない、有名なゲームがある。『ダービースタリオン』。仮想の世界で配合や調教を行うものなのだが、僕はここでサイレンススズカと同じ配合の馬を生み出し、種牡馬にし、現実で見られなかった夢の続きを見ようとしていたりする。
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