飲まないアルコールと吸わないタバコの匂いを服に染み込ませていく。「屋根裏」と名付けられた地下空間で騒音に囲まれる。温度感さえ付随する眩いライトに目を細める。身を委ねたくなる気だるい雰囲気がほのかに漂う中、感覚を研ぎ澄ませていく。ギターが鳴れば、鼓膜が振動する。ベースが鳴れば、ひざが踊る。ドラムが鳴ればありったけの内臓が片っ端から震えていく。そこから堅苦しい戦いが始まる。

 忙しく眼球を動かす。気持ちは一つ。「何も逃さない」。知り得ない要素の存在を知りながら、触れ方を選ばず、見えざる手を核心へ伸ばす。「気持ち」、「思想」、「魂」。そんな言葉で表現される、得たいの知れないものを取り込んでいく。確信のない軸だらけの世界が見えてたら自分を揺さぶる。力強く歪む。その時、そこに自分という軸が残るかどうか。今、僕には軸が見えない。

 揺れることはできる。動くことはできる。振ることもできる。しかしまるで地震に踊る本棚のごとく、純粋な自然現象に溶け込む。あいでんてぃてぃ。「僕はここに立っている」――立っているだけか。「僕には夢がある」――あるだけか。「僕には可能性がある」――ない。

 優等生を辞めて自分を信じることにした。小学校の高学年の時の話だ。あるもの、ないもの全部、鎧にしてきた。鎧を付け替える時、痩せっぽちな体から悟ったことが多分ある。見ないふりをしようとした、その動きにオレは気が付いた――逃げた。オレは今日、殴るべき奴の影を捕らえた。髪を逆立てた、猿顔の口だけ達者な野郎だ。

<おまけ:なし>

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索