僕が標榜する“言葉のファンタジスタ”とは、詩人やミュージシャンだけを指すわけではない。特に言葉を扱う人でなくても、素朴な一言で強烈な世界観を与える者や、何気ない会話の中で静かにファンタジーを作り上げる者がいる。前者の代表には、スポーツ選手が挙げられる。鍛え上げた肉体によって行ったパフォーマンスと想いのこもった言葉は、化学反応を起こす。そして後者の代表にはマジシャンが挙げられる。いわゆる“手品師”だ。

 夜、フジテレビで『マジック革命!セロ!!現実を超えた驚異の現象〜』という特番を見た。マジシャンは、ネタはもとより、会話を含めたトータルのパフォーマンスが大事だと思う。それは、マジックで驚かせるためだけでなく、マジシャンとして不思議な存在であり続けるためにだ。

 マジシャンは、スター扱いされているようにも見えるが、さらし者の要素がかなり強い。だから、マジックでの驚きとは別に、視聴者の「ネタ明かしをしなければ、見てやらない。お前はウソつきだ」という理解のない視線をいかにナチュラルに避けるかというのが大事だと思う。

 セロは、日本人の父とフランス人の母を持つ“ハーフ”。日本語と英語を巧みに使い分けるのだが、その自然な感じの会話が、マジックを見る者の「ネタの追求」をうまくやんわりと避ける。そして、モデルのような優しい顔立ちがその効果を引き立てる。さらに、彼のパフォーマンスは、女性を意識したからかどうかは分からないが、かなりチャーミングなものが多かった。ハンバーガーショップのメニュー表から実物のハンバーガーを取り出してしまうマジックでは、メニュー表から一度ハンバーガーが消えるのだが、彼がハンバーガーをかじってメニュー表へ戻すと、歯形のついたメニュー表が現れる。愉快さもネタ追求の目を避けるうまい手段だと思う。疑いの視線を楽しくかわしてくれるから、見る者は比較的素直に驚くことができる。

 言葉好きな僕にとって、彼は言葉のマジシャンでもある。しかし、格好いいよなあ。髪形からマネでもしようかな(笑)。

<おまけ>
「adore : Entertainment : セロ独占インタビュー」
http://www.adore.ne.jp/entertainment/special/cyril/

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