最近、ボクサーの亀田興毅(協栄)が注目を集めている。前回の試合は僕も現場で見たが、潜在能力を垣間見せるいい試合だった。彼は関西出身であることとその言動から、かつて日本ボクシング界に一時代を築いた辰吉丈一郎と比較される。しかし、彼よりも前に“第2の辰吉”の期待をかけられたボクサーがいたのを覚えているだろうか。

 辰吉や亀田と比べると“不良”っぽさはない。むしろ“都会派”なイメージが強い。辰吉に立ちはだかったウィラポン・ナコンルアンプロモーションという当時最強の王者(2005年4月16日に日本の長谷川穂積が判定勝ちで王座を奪うまで1998年から約8年間王座を守った)に4度挑戦した男(2度引き分け)の名は、西岡利晃。

 この日、1階級上げた西岡と元東洋太平洋王者の試合が行われ、深夜に日本テレビで放映された。僕の中で、西岡は資質があり、賢いアウトボクサーという印象があるが、階級を上げた影響もあるのか動きにキレは感じられなかった。正直に言って、これが本調子ならば世界王座奪取は相当に厳しいだろう。

 それにしても……。彼はいまだ現役である。にも関わらず、まるで「去る者は日々に疎し」とでもいった風な雰囲気が漂うのは、なぜだ。ピークを過ぎてしまったからか。ボクシングはスポーツでありながら、興行面での意味合いがあまりに強く、スターに頼る体質から抜け出せていない。世界戦じゃなくても、テレビで放映されなくても、いいボクサーはたくさんいる。しかし、世界戦で散々扇動されたにわかファンは、ボクシングの面白さを分からぬまま、離れていく。そして一瞬の機会をものにできなかったボクサーは、あっという間に影が薄くなる。どうして、こんなに報われないのだろう。

 僕は辰吉が世界を獲った試合をテレビで見た時、ボクシングに芸術性を感じた。当時中学1年生だった僕は、あれだけ至近距離で腕を振るのに避けながら打つなんて、何がどうなっているのかと思った。ボクシングの魅力は、決して豪快さだけではないと、今でも心の底から思っている。西岡のようなスピードと技術を武器とするボクサーが、どうか正当な評価を受けられる時代が来ることを願っている。そして、それを後押ししたい気持ちが、今日までの僕の道筋を作ったと言っても過言ではない。忘れられたボクサーよ、今一度輝け。

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