船上は雨 【9月22日(木)】
 早朝5時半。JR仙台駅前に降り立ったが、仙台市内には目もくれず電車に乗った。最初の目的地は、気仙沼だ。サンマの水揚げで有名な町だが、観光目的で訪れる人は多くない。気仙沼駅前の観光案内所で、おばちゃんに色々と相談してみた。おばちゃんは「折石見たいんだっちゃ?」と独特の訛りで僕の相談に答える。いくつかある観光スポットの中から僕が選んだのは「折石」という景勝地だった。巨釜の唐桑半島の岬崖上から見ることができる、高さ16メートルの大理石の脊柱である。夏場は毎日遊覧船が運行しており、海上から見ることもできるそうだが、残念ながらすでに祝日のみの運航となっていた。おばちゃんとの相談の結果、連絡船で湾内を抜けて唐桑半島にわたり、そこから徒歩で目的地を目指すことにした。また、宿泊地も翌日の移動を考えて気仙沼駅付近にしようと思っていたのだが、オススメの民宿があるというので、そこにあたりをつけて出発した。

 午前10時に駅を離れたが、いきなり半島へ行っても娯楽施設があるわけではないし、退屈するのは目に見えていた。そこでまずは腹ごしらえに「あさひ鮨」という寿司屋へ向かった。目玉はフカヒレ寿司ということで食べてみたのだが、これは食感こそ面白いがイマイチだった。またマグロがそこそこ旨かったが、何せサンマが甘くて旨かった。おまかせで握ってもらった後、サンマと戻りカツオだけ別に追加で注文。サンマのおかげで、食の旅としてはまずまずのスタートとなった。

 さて、ウミネコだらけの船着場から連絡船へ乗り、いよいよ半島へ――と思ったら、曇り空から冷たい水滴が落ちてきた。もはや、僕の旅では定番となった雨の到来である。都市部ならさほど困らないが、田舎町での移動は徒歩。船を降りた後「雨曝しなら濡れるがいいさ だって、どうせ傘など持ってないんだ」(「雨曝しなら濡れるがいいさ」/eastern youth)と強がりながら半島に敷かれた急斜面のアスファルトを上った。40分ほど歩いて、折石に到着。1つだけあるベンチに寝転がって上空を見上げると、松の葉が覆いかぶさっていた。小雨の中、しける海にそびえるデカい石を眺めながら色々と考えた。

 でも、答えは見つからなかった。団体客が来たのをきっかけに長居を止め、僕は宿舎へ向かうことにした。途中、折石で話した気仙沼出身の埼玉県民の方が車に乗せてあげるよと言ってくれたのが嬉しかったが、宿舎があまりにも近いので感謝だけを伝えてお断りした。普段「怖い」だのと印象を言われることが少なくないが、旅をしている時はそんなことを忘れることができて、とても嬉しい気持ちになれる。

 さて民宿に到着すると、ご主人がソファーに座りながらテレビを見ていた。「あのー、すいません、今日電話で予約した者ですが」と声をかけても見向きもしない。「あの〜」「すいません」と5〜6回繰り返すと、ようやく「うあ?」とこちらを振り向いた。ちょっと心配になったが、チェックインを済ませた。帰りのバスの時刻表をお願いしたら、船の時刻表を渡された。通されたのは「わかめの間」(なんだそれ?)。101とか102とかの部屋番でいい気もしたが、余計なお世話はせずに仮眠を取り、夕食を頂いた。海の幸満載の食事はかなりのボリュームで驚いた。その後は風呂に入って就寝。

 色々と考え事を抱えて出てきたのだが、どうにも気持ちは晴れなかった。旅を楽しみ、悩みを忘れることはできても、それは今の僕にとって解決策にはならないようだった。

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