「礼服を用意しておけ」と電話越しに言われた。入院している叔父の余命が短いというのだ。そんな催促は受けたくなかった。まるで叔父が死ぬのを待つようではないか。僕が会いに行くと本人が末期だと察知してしまうから、会うのはやめておけとも言われた。死ぬまで黙って待ってろって?

 叔父は、僕のおふくろの兄貴である。かなりのアルコール中毒者で、すでに肝臓は半分しか残っていない。それでも酒もタバコものんでいた。僕とはおよそかけ離れた存在なのだが、どうしても親近感を覚えずにはいられない。それは単に可愛がってくれた人だからというだけではない。「若い時によ〜、パンチパーマが流行ったから、オレもやったんだよ。でも、朝起きたら、パーマが取れちまってさあ〜」と、聞いたこともない直毛伝説を持つ叔父は、僕の髪を見ると自分の子でもないのに「オレの血を引いている」と笑った。

 僕がよくインターネットの世界で使っている名前(俗に言う「ハンドルネーム」)は「hedgehog」。英語でハリネズミを指す単語である。

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