会社の向かいの席で、先輩であるタケウチさんの声がした。
探していた誰かを見つけたようだったが……。
「あ! なんか用事があったんだけど」
「思い出します!」
 もはや、誰も「思い出してから声かけろよ」とさえもツッコミはしなかった。

 小学生の頃、授業中に先生が「この問題、分かる人」と言い、
僕を含めた大勢が手を上げて「はい! はい!」と言っていた時の光景を思い出した。
先生から指名を受けたのは、当時僕が一番仲良くしていたアベという友だちだった。
右手を大きく上げてアピールしていたアベは、先生から指名を受けるなり即座に立ち上がった。
「はい!」
「分かりません」
 あまりに真顔だったため、後で聞くと「待っている間に何を言うか忘れた」のだそうだ。

 君たち、幸せやね。

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