顔におおきなシミのある人を、電車の中で見かける。インパクトがあるので気を取られるが、物珍しい視線を送るべきではないと、妙に視線を避ける。その後で数度、チラチラと見てしまう。やけどの痕であったり、吹き出物だったり、ホクロだったり。見た目で大きな特徴がある顔には、どうしても、そんなふうに反応してしまう。

 ビートたけしがバイクで事故に遭った時、顔の半分が麻痺したままテレビ番組に出演した。いくらかのパーセンテージで変化が起きた顔は、もはや同一人物には思えぬほどでインパクトがあった。本人にとっては、麻痺した顔も自分の顔であろうが、僕にとってはまるで別人の顔だった。彼の顔が元に戻った時、我がことのようにホッとした。

 歯の治療の影響か、歯の違和感を気にしすぎたせいか。布団から起き上がって、痛む箇所を鏡で見てみたら、顔の左半分がぼっこりと膨れ上がってしまった。鼻のすぐ横から顎までが、何か口にモノでも入れているかのように腫れている。そして、それこそ麻痺でもしたかのような痛みを伴っている。

 きっと、今の僕は「興味本位で見てはいけない」と思わせる顔である。でも、相手が自分だから「ひどいなあ」などと言いながら、鏡の角度を変える。腫れている部分をさすってみる。こわばった感じがある。どこを圧しても痛みが走る。他人から見て、今の僕は別人なのだろうか。それほどではないのだろうか。いい男が台無しなのだろうか。どっちみちブライクだからどうでもいいのだろうか。

 ただ、今の僕の顔には痛みと憂鬱だけがある。笑っても痛みやがる。

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