ちょっと待て。日本プロボクシング協会の会長選がちょっとした話題になっている中、候補の一人である大橋秀行氏が、K−1やPRIDEなどのプロ格闘技団体へのプロボクサーの出場を容認する考えがあることを示唆したらしい。とても甘い考え方だと思う。

 例えば、人気のあるプロ格闘技団体に選手を派遣し、知名度を上げてプロボクシングのリングへ戻す。あるいは、プロ格闘家がボクシングのアピールに一肌脱ぐ。それらがプロボクシング界の人気復興につながる……。おそらく、おおよそのプランはそんなところではないだろうか。そんなことは絶対に起こり得ない。

 これまで、プロレスを含む多くの格闘技団体が、成功例であるK−1やPRIDEにあやかろうと選手を派遣してきた。例えば、シュートボクシングという団体の選手は、魔裟斗が出場している大会で優勝した。でもきっと、多くの人は「じゃあ、シュートボクシングを観に行こう」とは思わない。自分が動くよりも相手が動いてくれるのを待つのが、ライトファンの心理だ。「もっといろんな団体から(K−1やPRIDEに)選手を連れてきたら面白いね」と思うだけで、シュートボクシングに興味を示す人はあまりいないだろう。結局は、自分たちの競技を広めることよりも、人気団体の“選手育成部門”に注力することになりかねない。

 いや、それよりも懸念すべきことがある。もちろん僕個人の感想であり、僕は専門家ではないから断言すべき立場にはないが、日本ボクシング界のレベルダウンにこれ以上拍車がかかったら、本当におしまいだ。軽量級のトップの選手は依然として常に世界タイトルを狙える実力者が国内にいる。しかし、全体的な平均値としてのレベルは、正直に言ってかなり下がっているように感じる。トップの選手が他団体のリングに上がるための練習をし始めたら、だれが「見たくなるボクシング」をするのか。

 ボクシングファンである僕の大きなジレンマは「見たくなるボクシング」よりも「見たくなるキャラクター」が好まれる現実だ。多くの人は、ジャブの器用さや距離の取り方などには興味がない。だから、いつでもビッグマウスと派手な身なりが興味をそそり、迎合したボクサーが人気を得る(多くの場合、膨らみ過ぎた期待ほど強くないので、すぐに下火になるが)。選手のキャラクターを作り上げるという点では、K−1やPRIDEに学ぶべき点は多い。だがそれ以上に「K−1やPRIDEの選手が、打撃の練習をボクシングジムで教わるのはなぜか」をもう一度見つめ直してほしい。

 K−1やPRIDEのリングに、本格派のアウトボクサーが立ち、ボクシングルールで試合をしたら、どんなことになるか想像がつくだろうか。

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