短期出張の帰り、現場から名古屋駅までタクシーに乗った。重い荷物を持っているし、疲れもある。ぶらぶらと遊びに行く気力はないけれど、ご飯は食べてから帰ろう。そう思って、タクシードライバーに声をかけた。
「この辺で、美味しいご飯を食べられる店はありませんか」
「名古屋は、美味しいもの、ないですよ」
 新潟出身の運転手は、味気なくそう答えた。聞けば、白みそ育ちの彼の舌に、名古屋の赤みそは合わないのだという。僕もあまり味噌は得意ではないのだが、運転手は「山本屋」という有名うどん店を教えてくれた。名古屋駅の地下街にも店があるから行ってみてはどうかと。

 味噌煮込みうどん。なるほど、名古屋の名物である。店の入り口には、人が並んでいる。とまあ、それはかまわないのだけれど、並び方が悪い。四つ角に入り口があるのだが、通路の交差点の中心へと並んでいるではないか。どう考えても通行人の邪魔だ。店の壁側に折れて並ぶべきだろう。中途半端に列を作ると、後ろはそれに並ばざるを得なくなる。微妙に内側へ折れながら並んだ僕の前に、一人の男がやってきた。そして、待っていた連れの女性に言う。「内側に並ばないと邪魔でしょう」と。そうだ、それこそ正しい大人の考え方だと思っていたら、その男は後ろに並んでいる僕を気遣ったのか、振り向いた。彼は、俳優の奥田瑛二だった。うーん、カッコイイ。

 さて、食事である。味噌煮込みうどんの前に、板わさと名古屋コーチンのねぎまを注文。板わさは、まあ普通。ねぎまは美味しかったね、ねぎが。ここまで肉に勝つかというぐらい、ねぎの完勝。期待していた感触とは違ったが、まあいい。そして味噌煮込みうどん。味付けは悪くない。しかし、うどんの麺が気に入らない。どうも粉っぽくて硬くてちぎれる。つゆが撥ねないのは助かるが、どうもうどんを食べている気がしない。
 ところで、食事を摂っていると、向かい側の席の可愛い女の子が僕の方をチラチラと見ているではないか。本来、「名古屋はうどんより女だね〜」なんて書ける展開だったら良かったのだが、さすがにこの分かりやすい展開では、オチに気付くのが早かった。自分の席から振り返ると、そこに奥田瑛二がいた。

 あっさりとオチが付いたところで、地上へ戻って新幹線の切符を買う。2つ前に並んでいる外国人の顔に見覚えがある。外国人の知り合いはほとんどいないから、彼はテレビタレント……NHKイタリア語会話に出演しているボカボ・ダリオだ。こちらは周囲でも僕しか気付いていないみたいだが、ミーハー気分に少し嬉しかった。学生当時、番組を見ていた僕は、ブラウン管に映る彼に随分と楽しませてもらったからだ。声はかけなかったけど、「オレはあんたのファンだぜ」と言いたい気分だった。

 そんなこんなで名古屋短期出張は幕を閉じましたとさ。おしまい。

コメント

nophoto
eisin
2007年4月8日2:10

偶然やね、こっちも名古屋に行っていて味噌煮込うどんを食べたよ@山本屋。14日だったかな。ここの麺は固くて煮崩れないのだ。私も味噌味は好きじゃないんだけど、たまに食べたくなるんだな>ここのうどん。ただ昔より値段は高くなった割に味は落ちたような、気がしないでもない。行列に並ぶほどじゃないよね。

hedgehog
hedgehog
2007年4月10日2:51

あれは煮崩れしないようにってことで硬いわけですか。なんか、うどんを食べている気にはなれなかったですねぇ、僕は。

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